トレモロホリディ
「ミナちゃん、ごめんねー」


どういうタイミングで動いているのかわからないけど、ミナト君が私の前に戻って来た。


「いいよ。

他のお客様も居て忙しいんでしょう?

私は大丈夫だよ。

このお酒美味しいし、他のお客さんのカラオケ聴いてるだけでも充分楽しいよ」


さっきからみんな歌がすごく上手で、本気で感心してるんだ。


ちびちびお酒を飲みながら、ボーッとするのもたまには悪くない。


「何言ってんの。

俺が誘って連れて来てるのに、寂しい思いさせるわけないでしょ?」


ミナト君がカウンターに頬杖をついて口角を上げる。


その綺麗な顔に、お酒のせいもあって顔が熱くなってしまった。


そういうことをさらっと言えちゃうのは、やっぱりこの仕事をしているからなのかなあ。

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