(続) 冷めた結婚
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「でね、輝が」
「ごめん…嫌だったら払っていいから」
すべての経緯を話した時。
「愛莉さんの名前呼んだんだよ」って、あと一息で言い終わろうとしていた瞬間。
力強い腕に、引き寄せられたのだ。
嫌なはずがない。
昨日は少し昔のことを思い出してちょっと戸惑っただけ。
でも、怖かったのも事実。
それから、愛莉さんのことも気になる。
「流されたくない…」
だから、せっかく差し伸べてくれた輝の手から逃れるように身を捩った。
いつも、抱きしめられると安心する。
輝の鼓動を感じることができるから。
でも、今日だけは流されたくなくて。
「ごめん…」
声だけでも傷ついているのがわかってしまう。
「愛海が、嫌なことはしたくない。これ以上、愛海に嫌われたくないしな」
と無理してるってわかる笑顔を浮かべて、そんなこをいう。
私は、どれだけ輝を傷つけてしまうんだろう?