クライムハザード
内心悶々としている俺を余所に、彼女は鼻歌混じりにページを捲る。
いっそ、彼女の手の中のそれがファンタジックな小説か何かだったらどんなによかったろう。
彼女を横目で見やり、肩を竦めた。
毎日喪服のような真っ黒い衣服で身を包み、机に向かう。それが彼女の一日で、俺が登庁して退庁するまでずっと。
飄々というか、奔放というか、掴み所のない性格。仕事よりも自分の興味を最優先させる。組織に縛られるのが嫌いで、常に独りで行動する。
常に笑みを絶やさず、愉しそうに事件のファイルに目を通す。その事件というのが、また。