クライムハザード

 現場での調査を一通り終えた後、司法解剖に立ち会わないかと五十嵐から声が掛かり、彼女はふたつ返事で誘いを受けた。俺もどうかと言われたのだが……勿論、遠慮した。あの時の彼女の嬉々とした表情は、忘れたくとも忘れられない。

(…………恐ろしい人)

「ねぇ」

 自分のデスクに向かっていたはずの彼女が、いつの間にか俺のデスクの脇でしゃがみ込んでいるものだから、驚愕した。

(気配を消せるのかこの人は……っ!)

「な、なんですか?」

 バクバク煩い心臓を落ち着かせながら、何事もないように振る舞う。

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