クライムハザード

…… d. デンワ


 何とも恨めしい不本意な渾名を上司より賜ったその足で、俺は彼女と上昇するエレベーターの中に居る。

(……気まずい)

 決して広くはない鉄の箱は、謂わば密室。

 隣には、彼女――鹿羽夜魅。

 ふたりきり、だ。

 たとえ奇人変人だろうと、彼女は女性で。

 俺の肩にも届かない背丈。真っ直ぐに伸びた、腰を覆う黒髪。すらりと伸びた四肢。前髪から覗く長い睫毛、大きな瞳。薄紅に色付いた頬。

(黙ってれば、綺麗なのに……)

 勿体ない、と、俺はひっそりと溜め息を吐いた。

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