クライムハザード

「利き手が自由なら、メモだって録れるはず。それなのに、わざわざ右手に持ち変えた。その理由――」

 受話器を持ち変えた理由。

 そこに、事件の真相に近付く何かが隠れている。

 彼女はそう考えているのだろうか。

 ……少なくとも、俺はそう思っている。第六感にも似た、勘程度のものだけど。

「そうせざるを得なくなった理由が、絶対あるはずなんだけど……」

 珍しく、彼女は困っているようだった。

 へな、と下がった眉。彼女のこんな顔、初めて見る。

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