クライムハザード
目線を下ろすと、紺色の帽子を被った女性が申し訳なさそうに頭を下げていた。彼女は段ボール箱を抱えていて、それが俺にぶつかったらしい。
「……鑑識さん、ですか?」
「え? ああ、はい。そうですけど」
(そういえば、電話の指紋がどうのって言ってたよな)
これは、チャンスかも知れない。
「自分は、特殊犯罪施策機動班の金森と言います。先日の事件の担当の方にお話が伺いたくて……その、電話のことで」
「ああ、夜魅さんの。その事件なら、ぼくが担当ですよ」
ちょうど鑑識課に戻るところですから、ご案内します。
そう言うと、彼女はふんわりと微笑んだ。俺は素直に彼女の好意に甘えることにした。