クライムハザード
さあっと、風が吹き抜ける。
彼女の長い黒髪が、さらさらと流れていく。
「野間静は、ストーカーから野間涼子を守った。第三者に命を奪われる前に、自分が手を下すという方法で。結果的に、野間涼子は今後一切ストーカーに命を狙われることはなくなった」
「でも!」
「そう、それは犯罪。……でもね、禄郎くん」
俺に向き直った彼女は、真っ直ぐに俺の目を見つめて、言葉を紡ぐ。
「そこに彼のどんな感情があったか、解る?」
「……解りたくもない、犯罪者の感情なんて」
ぐっと握り締めた拳。涼子さんの無念を思うと、居た堪れなくなった。