クライムハザード
「彼、ものすごく愛してた。彼女のこと……姉以上に、ひとりの女性として」
「だっ……姉弟ですよ?」
「姉弟だから、殺してしまった。絶対に成就しない恋だから。ひとつになれないから」
切なげに伏せた睫毛は、かすかに震えていた。
それは決して風のせいだけではない。
いつも、貼り付けたような笑みを浮かべている彼女が、今は。
「――――理解できるってことも、結構キツいよ?」
酷く、儚げに見えた。
それから、俺たちは言葉を交わすことなく帰路についた。