触れて、抱きしめて、あなたのモノ
彼のアパートに背を向けて、スタスタと前だけを見て歩いた。暖かくなってきたと言っても、夜は少し肌寒い。


彼はもう追いかけては来なかった。だぶん、分かっているんだろう。今私に何を言おうと怒りが増していくだけだって。話をするには少しの時間が必要。考える時間が私には必要。


自分の行動が如何に可愛げがないか分かっている。けれど、ムカついた。最初はあんなことを言う大地さんに。そして、今はあんなことを彼に思わせてしまった自分に。


こんな行動ばかりしていたら、いつか彼に捨てられるかもしれない。そうならないためにも、


「もしもし、亜美?ちょっと相談があるんだけど……」


車に向かいながら親友である亜美に電話をした。きっと彼女が私に必要な情報を教えてくれるはずだ。


たった今起きた出来事を彼女には洗いざらい話をした。そして、本題に。これが私の聞きたかったこと。


「オススメのものってない?亜美なら詳しいと思って」

『……がいいよ。ストックあるからとりあえずあげるよ』


ほら、彼女は私が求めていた答えをくれる。そして手を差し伸べてくれる。


遅い時間の今からでも大丈夫だという彼女の言葉に甘え、彼女の家へと車を走らせた。


もう二度と、大地さんにあんなことは言わせない。
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