触れて、抱きしめて、あなたのモノ
……明らかにいつもとは違った。


いつも以上に色んな所に触れて、キスをして、丁寧に愛されて、身も心も歓喜の声をあげた。


ソファからベッドへとなだれ込み、何度も抱かれた。結局、私が作ったご飯食べ損ねてしまった。けれど、この結果の方が私の求めていたもので幸福感が溢れてくる。


今も、彼は私を抱きしめたまま離してくれない。いつもはこんなことしないのに、珍しい。けど、嬉しい。


「……もう機嫌直った?」


一緒にベッドに横になり、彼は私を後ろから抱きしめたまま、問いかけてくる。


きっとこの前のことを言っているんだろな。私が伝えなきゃいけないことがある。


「ごめんなさい。勝手に怒って出て行ったりして……」


「あれは俺が悪いだろ。……亜美ちゃんにも怒られて、大人しく待っておくように釘を刺されたんだよ」


……亜美、そんなこと言ってくれていたんだ。それで当たり障りのない連絡しかなかったんだって、理解した。


「言わせたのは私だし、原因は私だったんだよ。だから……がんばった。大地さんががっかりしない状態でいる努力をしようって」


考えていた事を少しずつ伝えると、強い力で体の向きを変えさせられ、彼と向き合った。ぎゅっとさっきまでよりも強く抱きしめられて、一度離れてしまった距離もまたゼロとなる。


「そういう所が可愛い。俺が悪い!って怒って終わりじゃなくって、俺のためにって努力する所とか……堪らなく可愛い」


顔は見えないけれど、きっと今優しい表情をしてくれている。これだけ距離が近いからか、感情までじわじわと伝わってきそうな気がする。

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