レンアイ ルール
「ねぇ、さっきのって…ナンパかな?」
タオルで顔を拭きながら、美緒が突然そんな事を聞いてきた。
「は?」
ナンパかなって…
それ以外になにがある?
「私、初ナンパだった!」
無邪気に笑う美緒に、一瞬で力が抜けた。
「おまえなぁ…」
「?」
「今日は俺がいたし、人目もあるから良かったけど…ホント気をつけろよ。」
そうだ、今日は俺がいたからまだいい。
でも、俺だっていつも一緒にいるわけじゃない。
俺の目の届かないところでも、こんな風に危ない奴に目をつけられたらどうするんだ?
「おまえ、黙ってれば見た目はそこそこ可愛いんだから」
そんな不安から、つい口に出てしまった意外な言葉。
そこそこ可愛い?
言ってしまってから、“しまった”と慌ててもすでに遅くて。
ちらり、と美緒の方を見ると、美緒は顔を真っ赤にしていた。
「どうしたの大和、可愛いとかいきなり…っ」
わかりやすく照れる美緒に、
何だか胸がモヤモヤとした。
「とにかく、気を付けろ」
「はーい」
自分の中に芽生えたモヤモヤの正体。
それから目を逸らす様に、俺は話を終わらせた。