あたたかい場所
「ここでええよ」
美紗は事務所まであと五分程度の所で、
僕に預けていた荷物を引っ張ってきた。
僕は美紗にいくつかの紙袋を持たせて、由香とおじさんのプレゼントだけが残った。
今日の僕は完全に休日。
事務所まで行けば仕事をさせられるだろうし、何より社長との約束がある。
美紗とどういう関係なのか、疑われるに違いない。
それを想定して、ここで別れることにする。
じゃあ、と美紗に言おうとすると、何かを思い出したようにそうや、と美紗が後ろを向いた。
「うちのカバンから、黒い袋取って」
そう言われたので、遠慮なく美紗の肩掛けバックに手を入れる。
ゴソゴソと漁ると、小さな黒い紙袋が見えたのでそれを取り出す。
はい、と美紗に渡そうとすれば袋を押し返された。