あたたかい場所

「曲提供な~。このフェスまでどれくらいあんの?」

「一ヶ月くらいですか」

「一ヶ月!?みじけぇなぁ。

…まぁいいや。関係者に、フェスの一週間前まで時間をくれって伝えろ」


神田さんが耳に手を近づけて電話のジェスチャーをしたから、すぐに受話器を手に取った。


関係者に一週間前まで待つことを承諾してもらうのには手こずったけど、

目の前で神田さんが腕を組んで立っているものだから、

こちらが引き下がるわけに行かなかったのだ。



「おはようございます」


ちょうど僕が電話の受話器を置いたとき、事務所のドアが開いた。


大きな声で挨拶をしたのは彩芽さんだった。
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