あたたかい場所

まぁ僕には、何もわからないし。

そう思っていると、メンバーと有村さんが父さんたちに挨拶に来た。

有村さん、翔さん、彩芽さん、晴輝さんの順番に父さんとおじさんに挨拶をしていく。


父さんは終始にこやかに対応していて、おじさんも少し堅いけど優しく対応していた。
が、おじさんは晴輝さんが握手を求めた時だけとても険しい顔をした。

渋々、というように握手に応じたから、晴輝さんも少し困ったような表情になっていた。



「皆さんお腹空いているでしょう。妻が張り切って作ったので召し上がってください」
そう言って立ち上がった父さんに、皆がダイニングテーブルに向かう。

僕たちの後ろで、険しい顔のおじさんに晴輝さんが紙袋を渡しているのを横目で見た。


確かあの紙袋は…お持たせにとここに来る前に購入した有名店のロールケーキだ。

おじさんはずっと表情を変えないけど、軽く会釈をしてその紙袋を受け取っていた。




あんなに、こそこそ渡さなくてもいいのにな…


そんな風に思うだけで、何も深く考えはしなかった。
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