あたたかい場所

「さすがお兄ちゃん。気が利くぅ~」

「はいはい」
由香からボストンバッグを受け取ると、ずっしりと重く両手は埋まってしまった。


こんなに大きい荷物を置いて観覧してたのか。

回りの人もさぞかし迷惑だっただろうな、となんだか申し訳ない気持ちになった。


「あ、駅にキャリー置いてるからそれも後で持ってね」

にっこりと、語尾に音符でもついているみたいに言う由香。


僕は渋々分かった、と言い由香にドアを開けるように言った。





もちろん僕のことなんて考えない由香は、両手が塞がっている僕の為にドアを開けてあげるなんてことはしない。
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