あたたかい場所
開けたとはいっても、少しだけ。隙間から覗くと、リビングの電気が点いているのが見えた。
「美紗ちゃん!しっかりして~」
中から聞こえた声が由香の声だとすぐに分かったから、安心して部屋に入った。
リビングまで行くと、ソファーに座っている由香と、その下のラグで寝転がっている美紗がいた。
「あ、お兄ちゃん!おかえり」
「びっくりしたよ。鍵ちゃんと閉めといて」
「帰ってくるから開けといんじゃん。感謝してよね」
ああ言えばこう言う奴だ。
素直に僕の言うことを聞いていた時はもう随分と昔になってしまった。
「どうやって入ったの?」
「お母さんから鍵借りたの」
上京して部屋を借りた時、合鍵をひとつ作って実家に送った。
持ってるなら持ってると、言ってくれればいいのに。
「美紗ん家に泊まるんじゃなかったの?」
今朝の由香の言葉を思い出して聞いた。