あたたかい場所


「うち、社長にウイスキーもろたんやけど、知らん?」

エレベーターの中で美紗に聞かれ、僕は呆気にとられた。



美紗ちゃん、君はね。社長がわざわざくれたウイスキーを一気飲みしたんですよ。

馬鹿みたいにね。
高い酒をね、ぐびぐび飲んだんですよ。
普通は味わって飲むものをね。


そう心の中で何度も繰り返しながら、そんな言い方をすれば機嫌が悪くなるのが分かっていたから、
美紗の機嫌を損ねないように優しく説明した。



「嘘~、あれめっちゃええやつやねんで?うち、馬鹿や」

頭を抱えてしゃがみ込む美紗。


馬鹿だって、自覚しているだけマシだな。

「あー味わって飲も思っとったのに」

「本当にそう思ってたらあんなことしないんじゃないの?」

「うるさいわ!タクシー代やらんで!」



またそれかよ、と思いながら美紗が部屋のドアを開けてくれたので遠慮なく入る。
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