あたたかい場所

「あ、誰か来とる」

美紗は靴を脱いですぐにそう言った。


足元を見ると、僕のものではない男物の靴が一足。

ガチャ、と音がして廊下の先を見ると、リビングへ繋がっているであろうドアが開いていた。



「美紗おかえ…り。青山くんも一緒だったんだ?」

声の主は晴輝さんだった。


一瞬僕がいることに驚いた晴輝さんだったけど、すぐに笑顔になっていた。

「うちさっきまで潰れとって、送ってくれてん。晴輝はどしたん?」

「楽譜届けに来ただけだからもう帰るよ」

「あー、ありがと。


そうや、聡のこと送ったってくれん?」


「いいよ」

勝手に会話が進んでいるけど…いいのかな。



美紗は美紗で“タクシー代浮いた~”って喜んでいるけど。
< 166 / 290 >

この作品をシェア

pagetop