あたたかい場所


「もーええやん!はよ上行くで!」

まだ六時半なのに、フロアに残っているのは美紗だけ。


他の社員は皆、事務所の屋上へ行ってしまった。



「後で行く。先に行ってて」

あと少しで書類が完成するにも関わらず、腕を揺さぶってくる美紗が邪魔で邪魔で仕方ない。
文字も打ち間違えるし、クリックもまともに出来ない。



「ちょい待ち。聡が寂しいんちゃうかな思て居ってあげてんねやん。感謝しぃ」


大きなお世話だ。

「はよ行こーやぁ!花火始まってまうー」


そう、今日は花火大会。

社長の意味深な発言はこれのことだったらしい。




事務所の屋上からは綺麗に花火が見えるようで、毎年社員や都合のつくタレント全員で花火を見ているんだとか。
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