あたたかい場所
接近
「へとへとや~」
美紗が個室の座敷に倒れ込んだのは、午後九時。
遅めの晩御飯を美紗と食べることになった。
九月に入り、HOT HEARTはツアーの打ち合わせに追われていた。
まだ四ヶ月あるとはいえ、時間の流れはとてつもなく早い。
社長を中心に会議ばかりの日々が続いていた。
「び、ビール飲みたい…」
「ダメ。送ってくれるんじゃなかった?」
「うぅ…」
今日は美紗の車で、美紗のマンションの近くの和風なご飯屋さんに来た。
いつしか、連れてきてあげるって言われたところだ。
約束を果たしたことが、美紗には大満足らしい。
仕事終わりの一杯を愉しむのは、今日は僕だけ。
さっき僕の家まで送ってくれると美紗が自ら言ったんだ。
ジョッキビールを喉に流し込み、美味いと言えば美紗は不満そうに水を一気飲みする。