あたたかい場所
闇
朝、いつも通る角を曲がると、いつもは静かな事務所の通りが人で埋まっていた。
賑やかというよりは…騒がしい?
事務所の前にいるのは、カメラや撮影機材を持った取材陣のような人たち。
よく、スポーツ選手のインタビューとかで見るような局アナみたいな人もいる。
それも数人ではなく、何十人と…
何かあったんだろうか。
そう思いながら、どうやって事務所へ入ろうかと考えていると後ろで車のクラクションが鳴った。
振り返ると、車に乗っていたのは神田さん。
口パクで乗れ、と言われたから助手席に乗り込む。
「裏口から行くぞ」
そう言った神田さんの表情はいつになく厳しかった。
いつもは強面ながら優しいのに。
僕は何があったのか、聞くに聞けずにいた。
裏口には先ほどの人たちはいなくて、すんなりと事務所の中に入ることが出来た。