あたたかい場所
「ごめん、私も悪い。美紗を置いて帰ったんだから…」
「彩芽は何も悪ないよ。しゃあないやん、弱いんやし」
彩芽さんは分かりやすく落ち込んでいた。
「このモデルなんで来てたんだろうな」
神田さんがスマホをスクロールさせながら言う。
画面はきっと美紗と撮られた男、“長岡大和”の検索結果だろう。
「仲良いみたいだったよ。他の二人もモデルだって言ってたし」
なるほどな。
モデルの女性は結構有名だし、世間の認知度もある方だ。
モデル仲間だって多いはずだし、彼女を慕う男性モデルがのこのこやってきたって事でいいのかな。
「長岡だっけ?俺聞いたことないんだけど、どっかの専属?」
晴輝さんが机に座って腕を組んでいる。
美紗が複雑そうな顔をしているし、やっぱり彼氏としては黙っていられないのかもしれないな。
「読者モデルから専属になった努力家らしいぞ。
でも認知度は低いな。雑誌でも登場回数は少ないらしい。干され気味だと」
神田さんがずっとスマホをいじりながら情報を出していった。
専属だという雑誌は有名だけど、僕も長岡の名前を聞いたことはなかった。