あたたかい場所

「ごめん、私も悪い。美紗を置いて帰ったんだから…」

「彩芽は何も悪ないよ。しゃあないやん、弱いんやし」
彩芽さんは分かりやすく落ち込んでいた。

「このモデルなんで来てたんだろうな」

神田さんがスマホをスクロールさせながら言う。


画面はきっと美紗と撮られた男、“長岡大和”の検索結果だろう。


「仲良いみたいだったよ。他の二人もモデルだって言ってたし」

なるほどな。
モデルの女性は結構有名だし、世間の認知度もある方だ。

モデル仲間だって多いはずだし、彼女を慕う男性モデルがのこのこやってきたって事でいいのかな。


「長岡だっけ?俺聞いたことないんだけど、どっかの専属?」
晴輝さんが机に座って腕を組んでいる。

美紗が複雑そうな顔をしているし、やっぱり彼氏としては黙っていられないのかもしれないな。


「読者モデルから専属になった努力家らしいぞ。

でも認知度は低いな。雑誌でも登場回数は少ないらしい。干され気味だと」


神田さんがずっとスマホをいじりながら情報を出していった。


専属だという雑誌は有名だけど、僕も長岡の名前を聞いたことはなかった。
< 201 / 290 >

この作品をシェア

pagetop