あたたかい場所
「じゃあゴミ袋取ってきますね」
「ありがとう」
事務室から大きいサイズのゴミ袋を取ってフロアに戻る。
千晴さんと二人でやれば、三十分程だろうか…
何度目か分からないこの作業には、もう慣れた。
ダンボールから取り出した封筒やファックスを、シュレッダーにかけていく。
それだけじゃ効率が悪いから、手でも破ってゴミ袋に落としていく。
紙に乗せてある中傷的な言葉に胸を痛めながら…
「うわ…これ、ひどい…」
千晴さんが顔をしかめていたから、紙を覗き込んだ。
“国民的やり捨てボーカル”
大きく書かれたその文字に目を奪われた。
ひどいな…こんなことを送りつけて、何が楽しいんだよ…
こんなの、美紗が見たら…
「何がひどいん?」
「美紗!」
後ろから聞きなれた関西弁が聞こえて、僕は咄嗟に紙をグシャッと握りしめた。