あたたかい場所

まだ表の方には何人ものマスコミやファンの姿が見られる。

僕は路地から裏口に回って中に入ろうとした。

そのとき、後ろから優しく肩を叩かれた。

振り返ると、知らない中年男性がいた。



いや、でもどこかで…。

「…何か?」


「こんにちは。青山聡さん」

ニヤリと怪しそうに笑って僕の名前を呼んだ男…こいつ、伏見だ…


このにやけ顔、どこかで見たことがあると思ったら…

「どうして僕の名前を…」

「俺は記者だよ。君があそこの社員ってことも、MISAの幼馴染みってことも、知ってるよ」

「…」

「幼稚園の頃からの付き合いだよね?小中高と同じ学校に通ってた」

「個人情報ですよ」

「そうだね。でも、これが俺の仕事なんだ」


にやけっぱなしだった表情は堅くなった。


こいつにとっても、それが生きていく術なのか。
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