あたたかい場所

ステージから退場して、衣装を着替えに戻ってきた美紗は

聞こえてきたアンコールの声援にホッと安心したような顔をしていた。



アンコールの声は、聞こえてきて当たり前。

なのに美紗は、そこまで気にする程不安だったのだろうか。


それなら今日のライブ成功は、美紗にとって大きな自信になるんだろう。

どんな事実があっても、ファンはずっとついている。


それを確認できれば、美紗の中に決意や信念が生まれると思うから。


「美紗、頑張れ」

僕は再びステージに戻る美紗に声をかけた。



「頑張るのなんか、当たり前や」


笑顔で頷いて歩いて行く美紗は、とても大きく逞しかった。
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