あたたかい場所

「高校一年の冬に路上ライブをするようになった。

最初はコピーばっかりだったけど、徐々に自分たちで曲を作るようになった。


自分が作った曲を陸が歌ってるのを聞くと、演奏しながらすごい恥ずかしかったのを覚えてる」

翔さんは少し照れたように笑った。

当時のことを思い出したんだろう。



「高校を卒業した春だったかな、ライブを見に来てくれてたお客さんの中に、

綺麗でお金持ちそうな女の人が毎回来てくれるようになった」



「それが…社長ですか?」

僕の予想は当たっていたらしい。翔さんは頷いた。


「名刺を渡されて、事務所の名前聞いても全然分からなくてさ。

ユリアさんの名前を出されたんだけど、イマイチ信用できなくて、



そのあとネットで調べてやっと信用していいんだって、思えた」
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