あたたかい場所
車内が一気にピリッとしたのに気づいて、
この質問をしたことに後悔したけど、翔さんは怪訝そうな顔ひとつせず、答えてくれた。
「あった。抵抗しかなかった。
その当時はファンがどうとか考えることもなかったけど、陸に対して大きい後ろめたさがあった。
陸がいたことを隠すってことだから…、
陸が俺たちと一緒にやってきてくれた三年をなかったことにするのは、辛かった。
でも陸は、誰よりも俺たちのデビューを祝ってくれた。
逃げたのは自分だから、自分に謙遜する必要なんてない、って。
それでスッキリしたわけじゃない。でも、俺たちが音楽をやっていくためには、それが一番なんだってそう言い聞かせた。
メンバーの脱退は、良いイメージは与えないから。
それにもし明かしたら、陸の事が公になるだろ。
あんな良いやつを、俺はマスコミなんかにさらしたくなかった。
だから会見を開いたとき、もう連絡を取ってないって嘘を吐いたんだ。
綺麗事だと言われてもいい。
俺は陸を、守りたかった」