あたたかい場所


「…」

「だけど美紗は、ずっと話せずにいた。なんでだと思う?」

「うーん…」



「俺なら、近くに居て自分の中で大きい存在の人ほど話せないことがある。

どう思われるか、どう捉えられるか、考えちゃうから。

軽い付き合いじゃない相手ほど。



美紗は話さなきゃと思う反面、話すのが怖かったんだろうな」

僕は一体、美紗の何を見ていたんだろう。


こっちに来てから、毎日のように美紗と一緒にいて、美紗を見てきたのに。

美紗は弱みを見せなかった。



いや、見せてたのかもしれない。それに、僕が気づかなかっただけかもしれない。


僕は、一体、何を…
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