あたたかい場所
「だから…東京ってどんな所かって聞いてきたの?」
「そう」
美紗は何度も僕に、『東京』という場所がどのような所か、というのを聞いてきた。
それは上京する場所だったからだと、今日やっと理解できた。
僕はここ大阪に来る前、東京に住んでいた。
と言っても生まれてから三歳になるまでの間で、僕にはほとんど記憶がない。
父親の転勤で大阪にやってきて、向かいの家が美紗の家だった。
それからはずっと大阪に居たから、僕は大阪出身大阪育ちの人とあまり変わりはない。
そんな僕は、東京ってどんな所かと聞かれても、タメになるような話は出来なかった。
何度も何度も質問してくる美紗に対し、
『にぎやかな街』だとか『人がたくさんいる所』だとか適当な事ばかりを言っていた。
美紗の質問の意義が分からず、適当にあしらっていたことを後悔した。
美紗にとっては重大な質問だったはずだ。
東京に上京するから、真剣に僕に話を聞きたかったのだろう。