あたたかい場所
「この間お聞きしました」
というのは嘘だった。
昔から美紗がコーヒーを飲むときは、ミルク二杯砂糖二杯と決まっていた。
最初、背伸びをしてブラックを飲んだ美紗のしかめっ面は今でも忘れない。
あれは本当に、ひどい顔だった。
それからは決まっていたミルクと砂糖の配分を今でも覚えていた。
「そう。あと、私の分もお願いしていい?」
「はい」
「ココアでよろしく」
「あ、分かりました」
社長、ココア飲むんだ。
ブラックのコーヒーをぐいっと行きそうなのに。
社長の分のココアを入れて、まず社長室に持って行った。