あたたかい場所
「バンドのことも?」
「うん。
したらな、三年経って芽が出なかったら帰って来いって言われた。
ほんで、事務として働けって」
おじさん…美紗のお父さんは歯医者を経営している。
最初、美紗からやりたいことがあると聞いたとき、
歯科医師になりたいのかなと思った。
美紗は一人っ子で、後を継ぐなら美紗しかいない。
でも美紗は、病院を継ぐ気も、ましてや働く気も更々無いらしい。
「絶対、この三年の内に成功して見せたる」
「そんなに上手く行くか?」
「好きなことやもん」
美紗は昔から歌を歌うことが好きだった。
そして、回りよりずば抜けて歌がうまい。
音楽の歌のテストはいつも先生に褒められていたし、
ついこの前は学園祭で弾き語りもしていた。
美紗はギターが弾けた。
アコースティックも、エレキも。
バンドだったら、エレキギターか?
きっと美紗はギターボーカルに憧れているのだろう。