あたたかい場所
「晴輝さんは何されてたんですか?」
「俺?買い物してた!午前中は暇だったからさ。ちょっと買いすぎたけどね」
後部座席には、パンパンになっている紙袋が四つ?
さすが…芸能人。一度の買い物でこんなに買ってしまうのか。
「美紗は一緒じゃないの?」
さらっと出た神田さんの質問に、少しだけ違和感を覚えた。
「まだ家で寝てんじゃない?」
「そうだな」
神田さんに言葉を返す晴輝さんの顔が、一瞬にして優しい顔になったのを僕は見逃さなかった。
おちゃらけてた笑顔じゃなくて、何か愛しいものを考えているときみたいな…
そんな笑顔だった。
「なんかついてる?」
ミラー越しに晴輝さんをじっと見てしまっていて、晴輝さんは恥ずかしそうに笑っている。
「いや…何でもないです」
晴輝さんはもういつも通りの笑顔に戻っていた。
その、何かを考えてる時だけあの優しい顔になるんだな…
─晴輝さんの指にはあの細身の指輪があった。