あたたかい場所
「ちょっと、聡!こっち来てぇや!」
美紗に大声で名前を呼ばれる。
若い女性がいっぱいいるこの店の中に、男が入っていくのはちょっと勇気がいるんだよな。
そんな中で美紗の大声+関西弁はひときわ目立って、客の目線が美紗に集中している。
勘弁してくれよ。ここでバレたらどれだけ騒ぎになると思ってるんだ。
これ以上美紗に大声を出させるわけには行かないから、仕方なく店の中に入った。
「せっかくやからトータルで買ったらん?」
「うん、いいけど」
「じゃあさー、靴どうしよ。由香ちゃんて黄色好きやったよな?」
「うん」
「あれ!取ってー」
上の方に置いてある黄色の夏らしいサンダルに背伸びしても届かない美紗。
今日はぺったんこの靴だから、余計に小さい。
美紗は性格の割に背が小さい。多分、気の大きさに身長が吸い取られたんだと思う。
本人には絶対言わないけど。
「うん、これにしよー。ええよな?」
全て美紗が決めてくれたから、僕は頷くだけだった。
もちろん由香のプレゼントも、しっかり持たされた。