恋が始まる5秒前
はじまりは、先月のお茶当番の日だった。

給湯室で食器を洗っていた私。

ああ、面倒くさい。

なんて思っていた思考が一瞬でぶっ飛ぶくらいドストライクの指先が急に目の前に現れた。

びっくりしすぎて、私はその指先を凝視して固まる。

せわしげにコップを洗いながら、

『割り込んでごめん、急いでるんだ』

って謝ると用だけ済ませてさっさと行ってしまった彼。

その背中を見送りながら、彼の使うコップになりたいって一瞬本気で思ったなんて友人には言えない。

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