恋が始まる5秒前
「はぁ~」

おもいっきりため息をつく4時50分の給湯室。

今日もダメだった。

諦めモードな私の前に、それはにゅっと伸びてきた。

白くて長くて整ったきれいな指。
私の理想を形にしたその指がそこにある。

夢か現実かそれとも思いが募りすぎてみた幻か?

突然すぎて区別がつかない。

だけど、そんなことを考える余裕なんてなくて。

気づいた時には、私は目の前の指を握っていた。

「「えっ!?」」

同時に出た言葉と固まる私。

視線だけを動かして、私はゆっくりと指先から手の甲、腕とたどっていきそして初めて彼と目が合う。
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