どうしようもないくらい好きでした(仮)
誠二さんに着いて、一番近くの喫茶店に入った。
ドアを開けた瞬間に、挽いた珈琲豆の香ばしい薫りが漂う。
店内の落ち着いた雰囲気が、制服姿の自分には場違いな気がしてならない。
スーツを着たサラリーマンが一人。
年配の紳士風の男性が、窓際の席で読書に耽っているのが見える。
私達は一番奥の席に向かい合って座った。
「ななちゃん、何飲む?」
「私、コーヒーで」
「じゃあ、俺もコーヒーにしようかな」
メニューを見ずに答えると、マフラーを外し、着ていたコートを脱いで空いていた隣りの椅子にカバンと共に無造作に置いた。
誠二さんは、そんな私のどうでもいい動作が終わるのを待っているかのようにマジマジと見つめている。
「制服着てるの初めて見たよ。高校生なんだよな、ななちゃん」
「はい。一応は」