どうしようもないくらい好きでした(仮)
「憧れ…ですか?」
「そう。陸は、俺の憧れなんだ」
誠二さんはもう一度同じセリフを繰り返した。
それがとても大切な言葉かのように、ゆっくりと、はっきりとした口調で。
「自分で自分のやりたい事がわかってる奴ってさ、本の一握りなんだと思うんだ。それを知ってる奴ってのは、知らない奴の何倍も人生を謳歌してるって俺は思ってる。
陸はさ、その一握りの人間なんだよ」
誠二さんはそう言うと、珈琲カップを口元に運んだ。
その仕草がとても大人で、この店の雰囲気に馴染んで見えた。
私の知っている、高級スーツに身を包み、巧みに営業スマイルを振りまく彼の姿とはどこか違った、飾らない本来の姿がそこにあった。