どうしようもないくらい好きでした(仮)
「陸があんなに穏やかで真っ直ぐなのは、きっとあの両親に育てられたからなんだろなって、俺ずっと思ってたよ。
あいつ、時々すっごい真面目な事言ったりするだろ? 柄にもなく」
「確かに、真面目な事…言いますね」
私達は思わず顔を見合わせて笑った。
どんなに親元から離れていても、その育ちの良さは陸の内面から滲み出ていた。
「俺の家はさ、まあ…自分で言うのも何だけど、それなりの資産家でさ。
子供の頃から欲しい物は何でも手に入ったし、大切に育てて貰ったって思ってる。だけど俺はさ、温室でヌクヌク育ち過ぎて、自分で道を切り開く方法を見失っちゃったんだよね」
誠二さんはそこまで話すと、ジャケットからタバコを出し火を付けた。
少しだけ、2人の間に沈黙が流れる。