どうしようもないくらい好きでした(仮)
「それじゃあ、あの店は誠二さんの本当にやりたい事ではないんですか?」
沈黙にいたたまれなくなった私の質問に、誠二さんは優しく微笑むと、少し間をおいてから答えた。
「どうかな…でも、陸のそれとは違うと思うよ。高校時代、あいつは既に自分のやりたい事が見えてた。
だからとにかく金貯めるために必死でバイトして、卒業したら旅に出るんだって言ってさ。俺、羨ましかったなあ…」
優しく微笑む誠二さんの顔が、どことなく寂しそうに思えた。
「俺は結局、大学行って卒業してもフラフラ親のスネかじっててさ。
何かしなくちゃって、気持ちばっかり焦ってて。
だからさ、俺思ったんだよね。
陸の人生を支えて行けたらって。
あいつが、あいつらしく居られる場所を俺が作ろうって」
その言葉の中に、陸と誠二さんにしか理解できない、2人だけの強い絆があるのだと感じた。