どうしようもないくらい好きでした(仮)
見慣れた駅のホーム。
階段を駆け上がり、改札を抜けると左に曲がる……と、そこには予想外の光景があった。
大きな体を寒そうに縮こませて、陸が立っていたのだ。
陸は、思わずその場に立ち止まってしまった私に気づくと、ダウンジャケットのポケットから手を出し、大きく振った。
「ななちゃん、早かったね」
白い息が陸の言葉と共に漏れては消えていく。
いつもと変わらない優しい笑顔がそこにはあった。
駆け寄って抱きつきたい衝動を抑え、私は息を整えながらゆっくりと陸の側まで歩いて行く。
「陸、もしかして迎えにきてくれたの?」
次の瞬間。
私は陸の腕の中にいた。
出会ったあの日のように。
「早く会いたかった」
陸の心地よい体温が、私の体を包み込んでいった。