どうしようもないくらい好きでした(仮)
とても静かな時が流れていた。
無風の空気の流れの中で、焚かれた香の煙りだけがユラユラと揺れ動き、燃え尽きた灰の残骸の代わりに、その香りを部屋中に漂わせる。
陸の話したかった事。
考えてみれば、その予兆はちらほらと見え隠れしていたように思えた。
部屋の隅に置かれていた、陸の相棒であるバックパック。
少しずつではあるが、日に日に膨らみを見せていた。
何に使うのか検討もつかない小物や生活用品。
そんな物が部屋のあちこちに置かれていた事もあった。
私は、それらを横目で確認しながら、どこか見ない振りをするように、視界の隅に追いやってしまっていたのだ。
いつかこんな日が来ることを想定しながらも、自ら確認する勇気も、それらに触れて確信する事も避けていた。