どうしようもないくらい好きでした(仮)



陸は優しく微笑むと、少しだけ考えるように遠い眼をした。


「自分探しの旅…なんて、そんな格好の良い理由が有る訳でもないんだ」


陸はそれだけ話すと、二本目のタバコに火をつけた。


「丁度、ななちゃん位の時かな。何となく自分の進路について悩み出したのは。

俺、こう見えても勉強はできたんだ。
特に強制された訳でもなくて、それでも教師だった両親の影響なのかな…。
このまま大学に入って、親や兄貴みたいに教師になるのも悪くないって、それまで思ってた。

でもそれは、本当に自分のやりたい事なのかって聞かれたら…自信がなくて」

「じゃあ、本当にやりたい事って何だったの?」

「何も無かったと思う。だから、不安になったんだ」


タバコを持つ手とは逆の手で、陸は私の髪をそっと撫でた。
まるで壊れ物に触れるように、優しく。
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