どうしようもないくらい好きでした(仮)
私は自分の肩を両手で抱え込みながら、零れる涙を拭う事もせずにいた。
後から後から零れ落ちる涙を拭う事など、不可能で無意味な事だ。
窓際から見上げた空が、とでも高く澄んで見えた。
気が付けば陸の寝息は止んでいて、変わりに優しい温もりが私の体を包み込むようにして側にある。
「七海…泣いてるの?」
「…たぶんね」
陸もまた、私の涙を拭う事はしなかった。
「この間、ななちゃん聞いたでしょ?
どうして旅に出るのかって。
俺、ちゃんと答えてなかった気がして。ずっと考えてたんだ」
黙って泣き続ける私の耳元で、陸の優しい声が呟く。