どうしようもないくらい好きでした(仮)
もう一度ど店内を軽く見渡してから、私は早々に裕美を探す事を放棄した。
このまま帰ってしまおうかと考えていると、こちらに真っ直ぐに歩いてくる人がいることに気が付く。
人混みを避けながら、まるで引き付けられるかのよう早足で近づいてくる。
そして、そうする事が当たり前のように目の前に立ち止まった。
思わず見上げる視線の先には、さっきのふわふわカールの男の人の顔。
どれくらいの間だろう。
時間にしたら、ほんの数秒。
彼は少しだけハニカムように微笑むと、私を見下ろすように視線を落とした。
言葉は何もなくて。
ただ一瞬視線が重なっただけ。
次の瞬間には、そのまま私の前を通り過ぎ、何事も無かったようにドアを抜け店内から外に出て行った。