どうしようもないくらい好きでした(仮)
何となく気まずい思いで、そっと部屋を覗き込んでみる。
ソファーに座りテレビを見る母の姿は、いつもの見慣れた光景で意味もなく安心する。
私の気配に気が付き振り向いた動作も声のトーンも、これまたいつもと変わらない母だった。
「あら、七海起きたの?」
「うん」
「まあ…朝よりはマシな顔になったんじゃないの」
そう言ってまた視線をテレビに戻す。
「ちょっと出掛けてくる」
「とこに? あんた、今日は学校休んでるんだからね。あんまりフラフラしないほうがいいんじゃないの?」
「うん。わかってる」
「なら良いけど」
いつもと変わらない。
それが有りがたかった。