どうしようもないくらい好きでした(仮)
「ななちゃん!」
紛れもなく、陸の声。
子供みたいに、嬉しそうに駆け寄る姿を見て、私も思わず駆けだしていた。
迷わず陸の腕の中へ。
大きくて温かい陸の胸に顔をうずめた。
「ななちゃん、ただいま」
「うん…」
「ごめんね。淋しい想いさせて」
「うん…」
あんなに考えていた言葉は、陸を目の前にして何一つ出てはこない。
それどころか、陸の顔を見上げることさえできない。
その温もりを全身で感じるように。
抱きつく腕に力を入れれば、陸もまた、痛いくらいにそれに答えてくれる。
それが嬉しくてたまらなかった。
このまま、時間が止まってくれたらいいのに。