どうしようもないくらい好きでした(仮)



母は、娘の私から見ても年齢の割にはそこそこ綺麗な方だろう。


母子家庭であったにも関わらず、所帯じみた疲れ切ったイメージとは程遠い若々しさがあったし、性格も底抜けに明るく、サバサバとして嫌みのない豪快さも持ち合わせていた。


またその性格のゆえに、私は小さな頃から時頼母の言動に驚かされ、理解するのに戸惑った事も何度かあった。


中でも一番驚いたのは、私に初めて彼氏が出来た時の出来事だろう。


母は私の部屋に来ると、おもむろに避妊具を手渡してきたのだ。


一応、母なりの性教育とでも言うのだろうか…。


未婚で私を産んだという、母なりの思いがあったのだろうとは思う。


「言いたい事は沢山あるけど、一番大切な事は、あんたがまだ子供だってこと。先ずは自分を守る術を知りなさい」


それが母からの言葉だった。





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