3本の長春花のおわり
「さっさと要件言いなさいよ」
「ああ。結婚式のこと、なんだけどさ」
「うん」
その話題かと、ため息を零す。
よりによって一番嫌な話だったらしい。
「神式かな? 仏式かな?」
「うん、知らない」
「アットホームな式がいいと思う?
でも、女子って盛大にやりたいらしいよな」
「うん、だから知らない」
「……冷たいな」
「当然でしょ? 興味ないもの」
今度こそ大きな音をたてて、アイスティーが空になる。
「人の結婚式なんだから」
鈴は鳴るように。
水は掌から零れるように。
何度も春はくるように。
そんな風に彼が変わったのは、三年前、ふたつ上の当時三年生の先輩と付き合うようになったから。
たったのふたつ。
今のあたしはあの頃の先輩の年齢を抜かしたはずなのに。
今のあたしの方が、サークルでたくさんお世話になった彼女よりずっと子供っぽいみたい。