3本の長春花のおわり
「まず、ふたりはまだ同棲でしょうが」
あんたが社会人になるから引越しして一人暮らしをしている先輩と同じ家に住む、なんて言い出したからお金もないってのに。
困るよねぇ、なんて笑いながら先輩と電話越しに話したのはつい最近のことだ。
こういう無鉄砲さ。
好きなものには真っ直ぐなところは変わっていないんだね。
「で。話はそれだけなの?」
「うん、まぁ」
昨日、久しぶりに電話がかかってきて、明日会おうなんて言ってきたと思ったらこれだけ。ふざけんな。
「あたしの時間を返せ」
「ははっ、ごめん。
でもちゃんと話すの久しぶりだろ?
お互い教採とか就活とかで忙しかったし」
まぁ、確かに。
教員採用試験なんてあたしは受けなかったけど、彼は大変そうだったからこんな時間なんて取れなかった。
「お互い教育大じゃなかったのに教師になるなんて思ってなかったよな。ここまで道が被るとは。腐れ縁って恐い」
「そうね。ひとまず合格おめでとう」
「そっちも塾の講師になれてよかったな」